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人形劇団ひとみ座創立60周年記念公演 第2弾「マクベス」

2009年3月24~27日、六本木・俳優座劇場にて上演された、
人形劇団ひとみ座創立60周年記念公演・第2弾、「マクベス」。
その重厚な世界観を、舞台写真からひも解いて行きましょう。

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ひとみ座60周年記念公演第2弾 マクベス あらすじ

 スコットランドの将軍マクベスは、同僚バンクォーとノルウェーとの戦争の帰還途中、
 荒野で、3人の魔女に出会う。
 魔女達は、「マクベスは王になる」、「バンクォーは王の父になる」と予言し、去って行く。
 ここから、マクベスの野望と悲劇の物語が始まるのだった。

公演状況

2009年3月24日〜27日
六本木・俳優座劇場にて上演。2009年稽古場見学&交流会を開催。

マクベス キャスト ()は介添え
マクベス 中村孝男 (根上花子)
マクベス夫人 篠崎亜紀 (髙橋ちひろ) サブボイス 亀野直美 山下潤子
バンクォー 伊東亮 (冨田愛)
ダンカン 齋藤俊輔 (森下勝史)
マルカム 小林加弥子 (亀野直美)
マクダフ 田坂晴男 (鈴木文)
マクダフ夫人 蓬田雅代
ロス 来住野正雄 (勝又茂樹)
フリーアンス 石井セリ (奥津洋子)
シートン 田中弘映 (高橋奈巳)
マクダフの子供1 山下潤子
マクダフの子供2 髙橋ちひろ
マクダフの子供3 冨田愛
魔女1 奥津洋子 (山下潤子 木村円香)
魔女2 篠崎早苗 (勝又茂樹 石井セリ)
魔女3 松本幸子 (蓬田雅代 髙橋ちひろ)
門番 伊東史朗
医者 山本幸三
侍女 鈴木裕子
伝令 勝又茂樹
召使い 鈴木文
暗殺者1 善岡修
暗殺者2 高橋奈巳
暗殺者3 貴族1 森下勝史
貴族2 勝又茂樹

                                 
マクベス スタッフ
原 作 シェイクスピア
松岡和子(シェイクスピア全集3マクベス 筑摩書房)
上演台本 友松正人
演出 藤川和人
人形美術 片岡昌
美術進行 岡崎千恵
美術製作 ひとみ座アトリエ 小倉悦子 穂苅吾朗 松本久美子 横田左千子 酒井郁
衣装 吉澤亜由美
舞台美術 大沢佐智子
音 楽 やなせけいこ
音響効果 佐藤謙一
演奏 Sound City Pianissimo
照明 坂本義美(龍前正夫舞台照明研究所)
照明操作 西川潤子
コロス指導 山下晃彦
舞台監督 西上寛樹
演出助手 石川哲次
宣伝美術 三浦佳子
ホームページ製作 来住野正雄 石井セリ
パンフレット編集 石川哲次
事務局 木俣かおり
制 作 半谷邦雄

登場人物・相関関係


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 出演者コメントや、稽古の様子などの綴られた、「マクベスブログ」のリンクが、永らく途絶えておりました。再掲いたします。懐かしい劇団員の様子など、ぜひご覧下さい。

  人形劇団ひとみ座『マクベス』公式ブログ

では、内容を見て行きましょう!

【勝手に画像トーク】付きでお届けします。「マクベス」で有名なセリフを織り交ぜつつ、
場面をご紹介いたします。なお、勝手に喋っておりますのは、yomoです。

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  『マクベス』オープニングシーン。「屍を重ねて 屍を重ねて…。」群読から始まります。
 舞台全体が布が覆われ、混沌とした印象。布にはしゃれこうべが累々と…。
   屍に埋もれて、スタートです。
 人形遣いはまず、人間の愚かさを語る存在として登場。
  そこから、ざああっと舞台全体の布が取り払われると…、舞台前面に突進してくる、三人の魔女!
 魔女、大きいです。180㎝は優にある身長です。
  最前列で観劇していた、私の友人の子ども達(当時小学生)は、半泣きだったそう。
 良いお席を確保したつもりだったのに…、ごめんなさい。(T_T)

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  荒野で魔女達が、マクベスを始めとする登場人物達を、取り出しては、鍋(壷)に入れていきます。
 …やはり半泣き。(T_T) 彼女達、虫で遊んでいます。登場人物達のモチーフは、虫です。
  画像中央にいる水色の羽の虫が、マクベスです。さあ、何の虫でしょう?

  魔女の見かけは人間です。魔女は、1人につき、主遣い1人、介添え(手)2人で遣いました。
 「3魔女×3人」で総勢9人! 階段も登ります。息も合ってますが、息も上がります・・・。

 「きれいは汚い、汚いはきれい」

 矛盾する言葉を呟く魔女たち。

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 「剣の達人 マクベス!!」
 初登場は、4人遣いのWソードで、剣舞!! きゃ〜、マクベス様〜!カッコいい~!
  (正解:マクベスは、自由に空を飛ぶトンボがベースのデザインです。)

 ノルウェイとコーダー連合軍に勝利したマクベスと、親友バンクォーが、魔女たちと出会います。
 3人の魔女は、マクベスには、

 「万歳、マクベス、いずれは王になるお方!」

 バンクォーには、

 「マクベスよりも小さくて大きい」「王にはならないが、王を生み出す」

 と予言の言葉を残し、消えていきます。

      
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  王冠ペンダントを着けてご機嫌なダンカン王。右は、バンクォーです。
  マクベスは、ダンカン王から武勲により「コーダーの領主」に任ぜられます。
 魔女の予言が正しかったこと、予言通りなら「いずれは王になる」ということに、
 心を奪われるマクベス。ダンカンを退ければ、自分が王になれる。

 心に浮かぶ殺人はまだ空想にすぎないのに、俺の五体をゆさぶり、思っただけで体が利かなくなる。

 マクベスは、ダンカン王を居城インヴァネス城に招き、戦勝の宴を開きます。
 一行には、ダンカンの息子・王位継承者マルカム、「子孫が王になる」と予言された
親友バンクォーたちが伴ないます。
 一応、虫の種類としてご紹介します。ダンカン王=カブトムシ、マルカム=カマキリ、
バンクォー=コオロギ、マクダフ=ムカデ(+夫人と子どもたちはアリ)と、なっております。

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 ダンカンの連れている貴族たちも、虫です。ん~?バッタ系とか、コオロギ系でしょうか?

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  マクベスから手紙を受け取り、事の次第を承知した、マクベス夫人。
 ダンカン王の暗殺を後押しします。
  マクベス夫人、ヴィジュアルは~、はい~! 蛾(が)です。
 宴が済み、暗殺の気持ちが揺らぐマクベスに、夫人は叱咤します。

  あなたは男の中の男になるの。あなたは自分を臆病者と決めて生きるつもり?
  自分の乳を吸う赤ん坊がどんなに可愛くても、私は柔らかい歯茎から乳首をもぎ取り、
 子供の脳味噌を叩き出してみせます。さっきのあなたのように一旦やると誓ったなら。


 女性ならではの表現、…怖いですね!覚悟が違います。  

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  マクベスは空中を漂う、血まみれの短剣の幻を見ます。
 しかし、心を奮い立たせ、ダンカン王を暗殺します。

  ここでは、暗殺にむかうマクベスが、体を強張らせると、4枚の羽を震わせる演出でした。
 ええ~?このために「虫」を選んだんですか~?ポパイさ~ん!(演出の藤川和人のニックネームです。)と叫びたくなるほど、 昆虫らしい気持ち悪さで、緊張感が表現されていました。
 デザインの勝利って、こういう事かと思いましたね~!

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 マクベスは、血まみれの手に短剣を持って寝室から出ると、罪の重さに心を苛まれます。

 叫び声が聞こえたようだ。「もう眠るな。マクベスは眠りを殺した」と。

  マクベス夫人は、その剣をもぎ取ると、眠らせておいたダンカンの従者に持たせ、
 罪をなすりつけました。
  すると、場外から門を叩く音が響きます。

https://hitomiza.com/img/gallery/madbeth33%20monban.jpg

 朝早く、ダンカン王を訪ねてきたのは、マクダフたち。
 城門に出てきたのは、酔っ払いの門番。(この役は人型でした。)
  この場面の門番のセリフは、喜劇要素の強い下世話な話題満載のセリフです。
 この名場面、ひとみ座の舞台では、門番役を、伊東史朗が演じました。
 
  ダンカン王の死を知ったマルカムたちは、身の危険を感じ、各地へ亡命していきます。

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  ついに権力の座についたマクベス。
 しかし、「バンクォーの子孫が王になる」の魔女の予言に、疑心暗鬼を募らせます。
  暗殺者を雇い、バンクォーとその息子フリーアンスに差し向け、バンクォーを暗殺します。
 暗殺者…頭部は蚊みたいなデザイン??死神の鎌のようでもあり、不気味です。
  1961年版の「マクベス」の際も、実は暗殺者は同じモチーフでした。触ると怪我しそうです。

  その後、宴の席でマクベスはバンクォーの亡霊を見て、貴族たちの前で取り乱します。
 マクベスは、不安の中で、荒野に赴き、再び魔女の予言を受けに行きます。

 「マクダフに気をつけろ」
 「女から生まれたものは、マクベスには傷をつけられない」
 「バーナムの森がダンシネインの丘まで来てマクベスに戦いを挑むまでは、
  マクベスは決して滅ぼされることはないだろう。」
 「バンクォーの子孫は8人の王になる」


  その間、有力貴族のマクダフは、イングランドのマルカムの元に亡命。
 マクベスは暗殺者を放ち、マクダフの夫人と子どもたちを暗殺します。
  そして、マクベスもマクベス夫人も、疑心暗鬼と、罪を重ねていく呵責の念に、
 知らず知らずのうちに深く取り込まれていくのでした。

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 イングランドに亡命した、ダンカン王の息子・マルカム。
 家族を暗殺され失意のマクダフと共に、マクベスへ反抗するべく兵を立ち上げます。

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  マクベスが戦場に赴いている間、マクベス夫人は、夢遊病に侵されてしまいます。

 手を洗いなさい。夜着を着なさい。怯えないで…。
 もう一度言いましょう、バンクォーは埋められて、墓の中から出てくることはありません。


  夫人の、手についた血を落とそうと、手を洗い続ける様子に、
  医者と看護婦は、行動に疑念を抱きますが口を噤みます。床のリノリウムが水面のようで美しい!
  (この役も人型…というか、お医者さんは、もう骨になってはりますなあ。)

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 ついにイングランド軍が、マクベスの籠城するダンシネイン城に進軍して行きます。
 その最中、マクベス夫人は死去。そこで、余りにも有名なこの一節が登場します。

 消えろ、消えろ、束の間のろうそく。
 人生はたかが歩く影、哀れな役者だ。舞台で見得を切っても、袖へ入ればそれきりだ。
 白痴のしゃべる物語、たけり狂うわめき声ばかり。筋の通った意味などない。


  木を隠れ蓑に進軍するイングランド軍。「森が動いた」との報告に、マクベスは「破滅よ来い。」と、出陣します。

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 マクベスは、復讐に燃えるマクダフとの一騎打ちに。
 「女から生まれたものからは傷は受けぬ」と嘯くマクベス。
 「マクダフは母の腹を切り裂いて、月足らずで生まれてきたのだ。」
  何という展開でしょう!帝王切開で、マクダフは産まれていたのです!
  ムカデだってことは、この際忘れて下さい!
 そして、魔女の予言は果たされ、マクベスは敗れたのでした。

  最後の演出は、マクベスを象徴するトンボの羽が、一枚づつちぎれていくというもの。
 羽をもがれたトンボって、哀しいですよね…。(でもやはり、虫むししい…。)
  雄々しくも哀れな、幕切れでした。